私たちは、障がいのある人の自己表現、創作活動を応援します

障がいのある方への公的な自立支援のあり方はまだまだ十分ではないと思いますが、一方で民間レベル、文字どおり草の根で活動を展開しておられる個人や団体も各地にあります。

 

2015年に埼玉県で「一般社団法人障がい者アート協会」を立ち上げられた代表の熊本豊敏さんにお話を伺いました。


熊本さんが障がい者アート協会を作ったきっかけは?

 

直接的なきっかけは、3歳の時に「知的障がいを伴う自閉症」と診断された私の次男と、絵の出会いでしょうか。次男の乳幼児期は、言葉が話せず癇癪が強い難しい子でしたが幼稚園の頃には自然と部屋の片隅で絵を描き始め、それ以来絵を描くという行為が次男にとってはアイデンティティを表出する上で最も重要な部分を占めて来たと思います。

 

まず、次男さんと絵の出会いがあったわけですね。

 

今は特別支援学校の美術部部長として創作活動を続けていますが、3年前頃でしょうか、ある素敵なご縁がきっかけで、自分自身が描いた作品からいくばくかの収入を得ることができ、かつ社会とのつながりを持つという貴重な経験を得る機会がありました。その事がきっかけで、自分の描いた絵をもとに、お小遣いが得られた喜びとさらには、FacebookなどのSNSの世界において国境を越えて海外の方たちとのつながりもできました。

 

なるほど、少しでも収入を得たことや、人とのつながりという事ですね?生きる上でのモチベーションにつながりますよね。

 

そうですね。「絵を描く」という自己表現との出会い、そしてそれをサポートする人々との出会い、こういった出会いが彼の人生に「経験」という光をあて、彼自身にとどまらず、私たち両親や次男の作品に価値を見出してくれた方々全ての人に精神的満足感を与えてくれたと確信しています。しかし、私の次男はある程度幸運な出会いもありましたが、改めて周りを見回すと、そのような出会いがなく、社会の片隅に埋もれてしまっている障がいのある人々は多く存在することも事実なんです。

 

想像できるような気がします。もったいないですよね。どっちにとっても。

 

そうなんです。私はそのような人々が、自分を表出する事によって少しでも社会とのつながりができて、また、社会の人が少しでも興味を持ってくれるような触媒になることはできないかと考えて障がい者アート協会を設立しました。

 

有難うございます。それではその障がい者アート協会の現在の活動について教えて下さい。

 

活動の目的は、一言で言えば、障がいがありながらも創作活動を続けている人々と、企業や個人といった社会とをつなぐ仕組みづくりです。

 

具体的にはどのような仕組み作りになりますか?

 

大きくは2つの活動に取り組んでいます。

 

1つ目は障がいがありながらも創作活動を続けている方を一人でも多く知ってもらい、その作品を一点でも多くたくさんの人に見てもらえるようインターネット上に立ち上げたギャラリーサイトで作品を日々公開しています。

 

「障がい者アート協会」のホームページにある「アートの輪」というものですね。

 

そうです。そして2つ目は、何らかの形で社会貢献を希望している企業に、レンタルや商品化といった作品の二次利用を提案し、実施~実施後のプレスリリース等アナウンスまで含めてCSR活動のお手伝いをしています。

 

この2つを実施することで、障がいのある人達は作品が世に出たという精神的満足と著作権利用料収入といった経済的満足を得ることができ、企業は社会貢献参画実現という満足、あるいは自社のバリューアップを実現できるという、無理のない自然な障がい者支援の仕組みが出来上がると考えています。

 

なるほど、企業にとっては、CSR活動としても有効かもしれませんが、社会貢献活動に留まらない収益活動としての可能性も十分ありますよね?

 

有難うございます。今私たちとしても様々な可能性について探りつつ、企業や自治体に働きかけているところです。

 

そうなんですね。いろいろな取り組みをなされていると思いますが、現在障がい者の方が置かれている状況についてはどのようにお考えですか?

 

創作活動に取り組んでいる人に限って言えば、非常に偏った状況に置かれていると思います。

近年アール・ブリュット、アウトサイダーアート等いろんな呼び名で、所謂「障がい者アート」は注目が集まってきています。この状況の中で注目を浴びている人々は、適切なサポートのもと、展覧会をやって多くの人に作品を見てもらったり、その作品が売れたりすることで経済的収入を得たり、社会と繋がりながら自分の居場所を確保できていると思います。


 

こういった人々はメディアにも度々取り上げられ、注目度も上がり、将来に向けて、より手厚いケアを受けられる環境が整えられていくでしょう。

 

なるほど、注目される方はあくまでも一部の方ということですね?

 

そうですね。実際には、十分なサポートを受けることもなく「ただ絵を描くことが好き」という思いだけを胸に、社会の片隅でひっそりと創作活動を続ける障がい者が前者の何十倍、何百倍もいると思います。

前者に比べ、これらの人を支援する仕組みや制度は圧倒的に不足していると思います。

 

障がい者アートの魅力はなんでしょうか?

 

そうですね。自己表出する表現の世界において、障がい者であるか否かという観点は必要ないように思いますが、絵を創作した方の背景にたまたま何らかの障がいがあったからこそ生まれて来たという芸術性の高いものもあると思います。

 

例えば、有名な山下清という画家の絵を観る時に私たちは、絵そのものの魅力を感じ取ると同時に、ドラマ化もされた山下清という人間の魅力までも感じ取る場合もあるのではないでしょうか。

その魅力は作品を見る人が感じてくれればいいと考えて活動しています。僕たちの使命はその「見る人」を一人でも多くすることと、「見る人」に一点でも多くの作品を見せることです。

 

 

この作品は、「わじまかんた」さんという方の「トリビアな文字」という作品です。近づいてみると分るのですが、その時の心象風景なのか分りませんが、小さな文字や数字、記号などが様々な色を使って表現されています。

 

離れてみると、非常に様々な色が繊細に浮き出す模様として捉える事のできる、パウル・クレーを思い出させるような作品だと思います。


色彩感のある素敵な絵ですね。一つ一つの作品にはアーティストのさまざまな思いが表現されているんだろうと思いますが、障がい者アート協会としての夢はどのようになりますか?

 

それは、収益事業として成り立たせることです。実際にやってみて非常に難しいというのが偽らざる実感ですが、一方でマーケティングや営業活動においてやれることがまだまだ多くあると感じています。

 

助成金に頼らずに人並み以上の給料が取れる収益事業構造を作れるとわかれば、今より多くの人が障がい者支援という領域に集まり、きっといろんな支援の仕組みが試行錯誤されながら、領域全体が進化していき、結果として今より多くの障がいがありながらも創作活動を続ける人の笑顔を見ることができると信じています。

そんな未来のきっかけにでもなれればいいと思います。

 

 

大変有難うございました。

 

当ホームページの「声の樹」の表紙は、「障がい者アート協会様」からご提供頂いたTakeshiさんの「一本の木」という作品を使用させて頂いております。

 

障がい者アート協会のウェブサイト

「一般社団法人障がい者アート協会」

 

https://www.borderlessart.or.jp/

 

「TAKESHI」さんの作品でタイトルは「森の演奏会」です。